2017年1月20日書店発売

ジュール・ヴェルヌ 著
石橋正孝 訳

terre_ala_lune_031巨大な大砲に取り憑かれた愛すべき紳士たちが活躍するガン・クラブ三部作を一巻に収録。その第一作『地球から月へ』は、ヴェルヌが幻視した「もう一つの」アメリカの物語。失業した大砲屋が砲弾を月に撃ち込むと言い出して……。続く『月を回って』で、無謀にも自ら月に向かうことになった三人の宇宙飛行士たちは、砲弾に幽閉されたまま、誰も見たことのない月の裏側へと回り込んでいく。それからおよそ二十年、地球に帰還した大砲屋の次なる目標は、北極。その顛末を語る『上も下もなく』は、ヴェルヌの過激なパロディ精神を炸裂させ、三部作をしめくくる。世界初訳の補遺、挿画128葉を収録した特大巻。本邦初の完訳。

ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクションの第一回配本である本書は、いわゆる「ガン・クラブ三部作」に当たる三作、すなわち、Jules Verne, De la Terre à la Lune (Paris, Hetzel, 1865), Autour de la Lune (Paris, Hetzel, 1870), Sans dessus dessous (Paris, Hetzel, 1889)の全訳を収録した。三部作を一巻にまとめて刊行した先例は、本国にもまだ存在しない。
本選集は、各収録作の最終ヴァージョンを底本として採用している。当然とも思われる原則をわざわざ断っておかなければならないのは、ヴェルヌ作品の翻訳としては、これが世界でも初めてのことだからである。[…]ヴェルヌの最も有名な作品ですら、信頼できる本文がいまだに存在していないということである。このような状況に鑑みて、本選集では、ヴェルヌとエッツェル父子の往復書簡から各作品の最終ヴァージョンを確定した上で、ナント市立図書館のウェブサイトで公開されている著者自筆草稿を適宜参照し、可能な範囲で校訂作業を行っている。本書収録作については、『地球から月へ』『月を回って』は挿絵版を、『上も下もなく』は[エッツェル書店刊行の]十八折判をそれぞれ底本とした。(「訳者あとがき」より)


目次
地球から月へ ──九七時間二〇分の直行路──
月を回って
上も下もなく
上も下もなく 補遺 ごく少数の人だけが知ればよいこと[A・バドゥロー╱椎名建仁訳]

訳註
解説 石橋正孝
訳者あとがき
細目次


著者
Jules Verne(ジュール・ヴェルヌ)
1828年,フランス北西部の都市ナントに生まれる.二十歳でパリ上京後,代訴人だった父の跡を継ぐことを拒否し,オペレッタの台本やシャンソンを執筆する.1862年,出版者ピエール=ジュール・エッツェルと出会い,その示唆を得て書いた『気球に乗って五週間』で小説家デビューを果たす.以後,地理学をベースにした冒険小説を次々に発表.作者が1905年に没するまでに六十篇を超えたそれらの小説は,いずれもエッツェル社から刊行され,1866年以降,その挿絵版が〈驚異の旅〉という総タイトルの下にシリーズ化された.代表作は,『地球の中心への旅』『海底二万里』『八十日間世界一周』『神秘の島』『ミシェル・ストロゴフ』等.多くの科学者や探検家が子供の頃に読んで強い影響を受けただけではなく,コナン・ドイル以降のジャンル小説の書き手はもちろん,レーモン・ルーセル,ミシェル・ビュトール,ジュリアン・グラック,ジョルジュ・ペレック,ル・クレジオ等々,ヴェルヌとの文学的血縁関係を自認する作家は少なくない.

訳者
石橋正孝(Masataka, Ishibashi)
東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学,パリ第八大学で博士号(文学)取得.日本学術振興会特別研究員を経て,現在,立教大学観光学部交流文化学科助教.専門はジュール・ヴェルヌ.著書に『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険 ジュール・ヴェルヌとピエール=ジュール・エッツェル』『大西巨人 闘争する秘密』(以上,左右社),『あらゆる文士は娼婦である 19世紀フランスの出版人と作家たち』(倉方健作と共著,白水社),訳書にアンヌ・ボケル,エティエンヌ・ケルン『罵倒文学史19世紀フランス作家の噂の真相』(東洋書林),フォルカー・デース『ジュール・ヴェルヌ伝』(水声社)ほか.フランス本国のジュール・ヴェルヌ協会および日本ジュール・ヴェルヌ研究会の双方で会誌の編集委員を務めている.

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