2017年10月14日書店発売

柄谷行人 著

反戦・反軍備、非暴力、そして9条擁護、反ネーション……、
今こそアクチュアルな安吾の全貌を示す
柄谷安吾論の集大成!

 

嘘をつけ! 嘘をつけ! 嘘をつけ!
我等国民は土人形のごとくに死ぬのが厭でたまらなかったのではないか。そのくせ、それが言えないのだ。(「続堕落論」)

 

『坂口安吾全集』全17巻(筑摩書房)の編集委員である著者が、月報に連載した安吾論「坂口安吾について」170枚を第一部に、2005年の論考「坂口安吾のアナキズム」や2010年に米国の安吾論集に寄稿した「合理への「非合理」な意志」、1975年の著名な評論「『日本文化私観』論」などを収録、大幅改稿による柄谷安吾論の集大成として刊行。著者の安吾論にはこれまで『坂口安吾と中上健次』(太田出版、講談社文芸文庫)があるが、本書が初の単独の安吾論集であり、7割以上が初めての単行本収録となる。
自ら自由人たらんとした安吾的精神、戦争をはさんで書かれた、日本人の自己欺瞞を鋭く突く安吾の言説の、今もアクチュアルな意味あいを抽出し、虚飾を排したその文学の全体像を描く評論集。

 

戦後の安吾のアナキズムは、天皇制批判と戦争放棄の新憲法支持において典型的に示されている。[…]安吾のアナキズムは、たんに国家の否定にとどまらず、ネーションあるいは天皇制の基盤である「社稷」そのものへの批判に向かう。そして、安吾にとって、「社稷」をつきつめていくと「家」になる。[…]「家」とは、民族や社稷といった共同性の源泉に存するものだ。これを放置しておいて、国家の揚棄や世界共和国はありえない。ここで、安吾の天皇制批判と平和論が交差することがわかる。[…]安吾が提示するのは「家に代わる社会秩序」である。そして、このアナルシーこそ、「暴力に対する唯一の知的な方法」なのである。(「坂口安吾のアナキズム」より)


目次

第一部

坂口安吾について
1   或る時代錯誤
2   二つの青春
3   僧侶と堕落
4   美学の批判
5   美と崇高
6   ふるさと
7   子供
8   超自我
9   ファルス
10   イノチガケ
11   殉教
12   穴吊し
13   もう一つの近代の超克
14   歴史家としての安吾
15   歴史の探偵=精神分析
16   戦後の革命

第二部
『日本文化私観』論(一九七五年)
安吾はわれわれの「ふるさと」である(一九八一年)
堕落について(一九八八年)
坂口安吾のアナキズム(二〇〇一年)
合理への「非合理」な意志(二〇〇四年)

第三部
新『坂口安吾全集』刊行の辞(一九九七年)
坂口安吾の普遍性(一九九八年)
[対談]新『坂口安吾全集』編集について/関井光男・柄谷行人(一九九八年)

あとがき