2019年11月30日書店発売

ジョ・ヨンイル 著
高井修 訳

韓国文学に最も強い影響を与えた日本人文学者柄谷行人の30年に及ぶ韓国文学界との交流を跡づけるとともに、グローバルに顕在化する文学(生産)システムを撃つ、新鋭による痛快果敢な闘う批評!

韓国に翻訳紹介されるや大きな衝撃を与えた柄谷行人の「近代文学の終り」。理念的優越性を失った文学に終焉を告げた「近代文学の終り」は、その再生産に携わる者たち──文壇、大学、版元からなる文学システム──にさまざまな反撥とすれ違いを生んだ。本書は、創作と批評、教育と出版を取り巻く文学生産システムを俎上に載せ、文学の真の敵を撃つ果敢な文芸批評であり、また1980年代以来の、柄谷行人の韓国文学との交通・交流を丹念に調べあげつつ展開される優れた柄谷行人論。

これまで少なからぬ日本の思想書が紹介されはしたが、ずっと読まれているのは柄谷行人ただ一人と言っても過言ではない。「近代文学の終り」というテーゼが日本よりも韓国で大きな影響力を発揮したのはなぜだろうか。私は原点に戻って考えてみることにした。日韓の真の文学交流を望む人がいるなら、韓国人であれ日本人であれ、柄谷が残したものを引き継ぐことから始める必要がある。柄谷行人が韓国文学に及ぼした影響は、日本で漠然と想像するよりも大きく、それは客観的なデータでも証明されている。だがそれとともに強調したいのは、柄谷行人もまた韓国(文学)から多くの影響を受けたという事実である。『探究』以後のいわゆる思想的「転回」は韓国と日本を行き来する移動によってなされたものだった。(日本語版序文より)


目次

日本語版への序文

序文

第一章 文学の終焉と若干の躊躇い
一 文芸創作科の躍進と文学をやめた者たち
二  近代文学の起源と近代文学以後の文学
三 批評の躊躇い─予感することと宣言すること
四 近代批評の特質とその存在様式
五 制度と批評─批評家の必須条件
六 反復としての文学─純粋批評の誕生

第二章 「文学の終焉」をいかにして耐えるか
一 危機か、それともチャンスか
二 韓国文学の生存法
三 村上春樹という問題
四 批評という両刃の刀

第三章 批評の運命─柄谷行人と黄鍾淵
一 「柄谷行人」という亡霊
二 近代文学以後の文学
三 芸術の終焉または芸術の解放
四 「文学の終焉」と「芸術の終焉」
五 動物化する人間─コジェーヴの「終焉論」分析
六 批評の終焉または批評の転回
七 賭けとしての批評とその運命

第四章 批評の老年─柄谷行人と白楽晴
一 終焉か、価値=甲斐か
二 柄谷行人と韓国文学との出会い
三 「終焉」を前にして─白楽晴と黄鍾淵
四 批評の出会い─『文学と知性』から『創作と批評』へ
五 韓国文学と日本文学の出会い─金炳翼の観点から
六 批評の衝突A─「文学」をめぐって
七 批評の衝突B─「民族(nation)」をめぐって
八 批評の終焉─文学の敵となった文学
九 揺れる文壇体制─創批スーパースターズ 最後のファンクラブ

第五章 「語り」対「批評」─柄谷行人と黄晳暎
一 黄晳暎に対する礼儀─『パリデギ─脱北少女の物語』の内と外
二 韓国文学のルネッサンス─黄晳暎と村上春樹
三 韓国代表という栄光─黄晳暎とシム・ヒョンネ
四 ねじを巻く風景─『沈清』の場合
五 楽しいインタビューと最低限の尊重─小説家対批評家
六 小説から寓話へ─巫堂と探偵
七 経験と判断─「近代文学の終焉」という陰謀
八 黄晳暎と日本という国
九 わたしが張本人だ─黄晳暎対T・K生
一〇 語りを越えて─大江健三郎をめぐって
一一 「長雨」をめぐって─尹興吉と中上健次
一二 根底という幻想─尹興吉と黄晳暎
一三 間違った出会い─黄晳暎と中上健次
一四 語りから批評へ─黄晳暎と柄谷行人

原註、訳註
文学者等一覧
訳者あとがき


著者
ジョ・ヨンイル(曺泳日 Cho young-il)
1973年生まれ。文芸評論家。著書に本書の他『韓国文学とその敵』、『世界文学の構造』(高井修訳、岩波書店、2016)、『職業としての文学』など。本書は著者の第一作である。
日本語からの訳書に『言葉と悲劇』『近代文学の終り』『歴史と反復』『ネーションと美学』『世界史の構造』『倫理21』(以上、柄谷行人著)、『存在論的、郵便的』(東浩紀著)、『ショパンを嗜む』(平野啓一郎著)などがある。

訳者
高井修(TAKAI, Osamu)
1963年、大阪生まれ。翻訳家、コラムニスト。韓国のウェブマガジン『マガジンt』『オンライン当代批評の考え』にコラムを連載。韓国の映画雑誌『Cine21』通信員としても活動した。2016年に韓国文学翻訳院が主催する第15回韓国文学翻訳新人賞受賞(日本語部門)。訳書に曺泳日(ジョ・ヨンイル)著『世界文学の構造 韓国から見た日本近代文学の起源』(岩波書店、2016)、ジュ・ヨンミン著『仮想は現実だ』(https://ageofvirtualization.com/?lang=jp)。