ジョアナ・ラス 著
小谷真理 編訳

文学作品において常に重視される男性—男性の有能さの証としてしか存在しない女性。古今東西の膨大な女性思索小説を実例に、男女の役割分担にしばられた文学的状況を徹底批判。ジョアナ・ラスの名著、完全邦訳。小谷真理書き下ろし論考100枚収載!

 

女性の文学作品とそれをとりまく言説空間を再考するには、いったいどうしたらよいのか—本書は、このような問いに関心を抱くかたがたすべてのために企画され、それを考えるために不可欠な概念「テクスチュアル・ハラスメント(文章上の性的いやがらせ)」を導入して、その方法論的可能性に思索をめぐらす一冊である。
文学作品に関するフェミニズム批評は、ここ20年で目を見張るほどの成果をあげてきている。男性作家の文学作品をフェミニズム批評の視点から分析する、あるいは、女性作家の作品を発掘し評価し直す作業は、近年ますます活況を呈するようになった。そこでのフェミニズム批評は、従来の批評的な価値基準とは異なるオルタナティヴな方法論として提示され、その斬新な解釈は絶大な衝撃を与えてやまない。それは、20世紀から21世紀にかけて脈々と受け継がれますます発展していくであろう、きわめて大きな文化的潮流といえる。
本書『テクスチュアル・ハラスメント』は基本的に、そうした先人の功績を念頭に置きつつ、従来の文学的価値基準そのものをターゲットにした問題提起であると考えていただきたい。オルタナティヴな批評的方法論としてのフェミニズム批評が成熟したからこそ、ようやく価値基準そのもののジェンダー構造を明らかにすることができる。今後この分野に着手することなくしては、真のジェンダー批評の樹立はありえない。(あとがき、より)


目次
イントロダクション 小谷真理
女性の書き物を抑圧する方法 ジョアナ・ラス 小谷真理訳
1 無言の重圧
2 自己欺瞞
3 行為主体性の否定
4 行為主体への冒涜
5 二重基準の罠
6 間違った分類法による囲い込み
7 「一発屋」神話の真相
8 全集からの締め出し
9 先輩作家不在の危機
10 女たちの反応
11 「価値基準」にまつわる懐疑的論争
エピローグ

この批評に女性はいますか 小谷真理

あとがき
原註