高澤秀次 著

戦後かずかずの節目で時代と対峙し、われわれに圧倒的な影響力を与え続けてきた吉本隆明。「転向論」以来のその無敵の思想が、政治意識が稀薄になる時代の流れとともに強度を失うさまを跡づけながら、その気質の基底にある根源的な孤独と〈病〉=悲劇をあぶり出す。一貫して大衆の原像を手放さない吉本思想。その市民的欲望の肯定と革命への志向は果たして両立しえたのか、それは戦後の反体制左翼思想に対してどのように機能したのか。吉本の著作を読み解きながら同時代を歩んだ著者による渾身の書き下ろし評論650枚。


目次
序章 廃人の歌
1章 太宰という罠
2章 花田のコミュニズム/安吾のアナキズム
3章 死者を抱く者
4章 アジアから母型へ
5章 癒されざる〈病〉
終章 欲望の肯定と脱政治化

あとがき

高澤秀次(たかざわ・しゅうじ)
1952年生まれ。早稲田大学第一文学部卒,文芸評論家。中上健次に関する年譜、評伝、編著のほか日本近代思想史、戦後知識人論、また沖縄、対馬をフィールドワークした民俗ルポルタージュなどの著書多数。
・これまでの著書
『文学者たちの大逆事件と韓国併合』『旗焼く島の物語―沖縄読谷村のフォークロア』、『辺界の異 俗―対馬近代史詩』、『昭和精神の透視図』、『戦後知識人の系譜』、『評伝中上健次』、『ニッポンの知識人』(絓秀実,宮崎哲弥との共著)、『海をこえて 近代知識人の冒険』、『中上健次事典』、『この思想家のどこを読むのか』(西部邁、佐伯啓思らとの共著)、『江藤淳―神話からの覚醒』、『戦後日本の論点―山本七平の見た日本』
・中上健次に関する編著として
『中上健次エッセイ撰集』(全二巻)、『中上健次と読む「いのちとかたち」』、『中上健次[未収録]対談集成』、『現代小説の方法』がある。