エマニュエル・リヴァ写真集
港千尋+マリー=クリスティーヌ・ドゥ・ナヴァセル 編
関口涼子 翻訳

アラン・レネ/マルグリット・デュラスの名作「二十四時間の情事」主演女優がロケ中に撮った50年前の広島。パリで発見されたその写真には、復興なった街と人々の生活が生き生きと写し出されている。映画製作をめぐるレネからデュラスへの手紙、港千尋によるエッセイ、その他テクストと資料図版を併録。広島を舞台に日本とフランスの視線が交錯する、歴史的にも映画史的にも価値の高い写真集。

 

アラン・レネの長篇作品『ヒロシマ・モナムール』は広島を舞台に、男女の一日の逢瀬をとおして戦争の記憶を描いた、映画史に残る傑作として知られてきた。本書に収められた写真は、この映画に岡田英次の相手役として出演したフランス人女優、エマニュエル・リヴァが、1958年の夏、ロケのために訪れた広島で撮影したものである。
映画は1959年にカンヌ映画祭で公開され、その翌年に脚本を書いたマルグリット・デュラスが同名の本を出版している。本には、映画のスクリプターをつとめたシルヴェット・ボドロがロケ時に撮影した写真が収録されていたが、リヴァが撮影した日常風景はこれまでまったく知られることがなかった。これらの写真のネガは、ほとんど無傷のままリヴァ本人によって保管され、ちょうど半世紀後にわたしたちの前に現れたことになる。
6×6サイズのカメラで写されたのは、原爆投下から13年後の復興途上にあった広島の町の風景であり、人々の生活であり、そして子どもたちである。平和記念公園からほぼ川沿いに歩きながら、彼女は道すがら出会う対象を、やさしく受けとめるようにシャッターを切った。まなざしは柔らかいが、被写体をとらえる観察は驚くほど正確であり、過不足ない構図のなかに水辺の輝きや路上の空気までが写しこまれている。[港千尋、イメージの奇跡─刊行に寄せて。本書より]

エマニュエル・リヴァ Emmanuelle Riva
女優。1927年生。舞台女優として活躍していたが、『ヒロシマ・モナムール』で映画初主演を飾る。続けて『ゼロ地帯』(ジッロ・ポンテコルヴォ監督、1960)、『モラン神父』(ジャン=ピエール・メルヴィル監督、1961)、『テレーズ・デスケルウ』(ジョルジュ・フランジュ監督、1962、ヴェネツィア国際映画祭女優賞)、『山師トマ』(同監督、1965)などの映画に出演。1969年、蔵原惟繕監督による石原プロ製作『栄光への5000キロ』に助演、話題を呼ぶ。その後の出演作に『自由、夜』(フィリップ・ガレル監督、1983)、『トリコロール/青の愛』(クシシュトフ・キェシロフスキ監督、1993)ほか。現在も活動を続けている。