港千尋 著

A・レネ/M・デュラスが映画史に残した名作『ヒロシマ・モナムール』。その主演女優が撮った1958年広島の写真再発見を縦糸に、映画公開50周年を期して放つ書き下ろし評論。ドゥルーズ、クラカウアー、ギンズブルグ、アレント、デリダ、ブランショ、バタイユらを参照しつつ、写真が写し取る〈瞬間〉の意味、それが孕む〈死〉についての考察を繰り広げる。

 

書名にあるように、ここでわたしたちは「小さな」歴史を対象にしている。鉄や石のモニュメントとともに、掌に載るような写真や絵葉書も出てくるだろう。だから「ちっぽけな」とも読み替えることもできるだろうが、「小さなこと」のうちに秘められていることが、どのようにして目に見えるようになるか、あるいはならないのか、どのようにして語られるようになるのか、あるいはならないのか、について考えてみたい。
ある「かたち」が時空を超えて、文化の異なる場所に生き延びることの不思議から、美術史家アビ・ヴァールブルクは独創的な思想を生み出した。生き延びた女性と男性の物語を、その細部においてたどりながら、わたしたちはある認識の形式が、たとえば「瞬間」と呼ばれる経験が、神話時代から極限状況の証言にいたるまで、時空を超え、異なる場所に生き延びることについて、知ることになるだろう。[本書より]