管啓次郎 著

水半球に横たわる「見えない大陸」(ル・クレジオ)、ポリネシア。フィジー、トンガ、クック諸島、タヒチ、そしてラパ・ヌイ(イースター島)へ。アオテアロア=ニュージーランドを拠点に、太平洋の大三角形の頂点を踏みしめ、旅について、旅の記述について、行くことと留まることについて、こぼれ落ちる時間のなかから思考をすくいあげる生のクロニクル。第62回読売文学賞(随筆・紀行賞)受賞!

 

ぼくの旅は徹底的に観念的なものであり、それが弱みであり、強みでもある。観念的であるがゆえに楽しめない性格のつけは、すでに十分に支払ってきた。だが一方で、そもそも観念的な行程を脳裏に描かなければけっして行かない場所に行ったりもする。ポリネシアは三角形なんだって? だったらそれぞれの頂点には行かざるをえないね。これは愚行だ、否定できない。地図を見たり、どこかで見かけた一枚の写真にとりつかれたり、何かの文章の一節が妙に気にかかったりして、無根拠に出発する愚者の一部族。ぼくはそのひとりだった。[本書より]


目次
フィジーの夕方
湖とハリケーン
ヌクアロファ
最後の木の島
オタゴ半島への旅
タンガタ・フェヌア(土地の人々)
青森ノート
見えないけれどそこにいる、かれら
「世界写真」について
ほら、まるで生きているみたいに死んでいる
ここがもし聖地でなければどこが
もしアメリカがなかったら、いまは
モーテルと地図帳
金沢で会う寒山、拾得
島と鳥、鳥と果実
その島へ、この海を越えて
桜、花、はじまり、小さな光
島旅ひとつ、また
ユートピアからパペエテ
ラロトンガ縦断、その他の気まぐれ
武漢
冬のフランス
テ・マエヴァ・ヌイ
マオリの島の片隅で