ライティング・マシーン─ウィリアム・S・バロウズ

旦敬介 著

定価:本体2,700円+税
2010年11月1日書店発売

四六判上製 286頁
ISBN978-4-900997-30-1
装幀:間村俊一
写真(表紙・オビ):港千尋
カバー図版:コロンビア南東部の原住民による幻覚イメージ

ライティング・マシーン=バロウズ誕生前夜の南米旅行に焦点を合わせ、初期作品『ジャンキー』『クィア』と当時の書簡の厳密な読解を軸に、自己の喪失と発見の過程を辿りながら、バロウズの作家としての出発点が南米とヤヘ体験にあったことを示して、『裸のランチ』に至る作家的自立の過程を跡づける。50年代バロウズを誰よりも厳密に読み込み、そのテクストと人生に触れんばかりに接近することで、他者を渇望するバロウズの魂についに共振する斬新鮮烈なライフワーク。バロウズを〈南〉から新たに発見する鮮烈な評論は、まちがいなくこれからのバロウズ読解の指標となるものである。

[第二部]では、たしかにバロウズの作家としての重大な出発点ないし不可欠な変容が南米とヤヘの体験にあったことを示せたと思う。また、『クィア』の旅とヤヘ探索との関係(無関係)に関する指摘はこれまで世界中で誰も言っていないことだと自負している。バロウズの作品が、テクストとして厳密に読まれる機会がどれほど少ないかを示していると思う。……

だからこそ、生半可な伝記的情報、有名なキャッチフレーズ、悪そうなイメージだけが注目されがちなバロウズの人間と作品を、既成のイメージを乗り越えて、彼に寄り添って深く読みこむ読者の道標になるような本を作りたかった。[あとがきより]