8月16日書店発売

エドゥアール・グリッサン 著
中村隆之 訳

ルイジアナ州バトンルージュでの長期滞在を経て書き下ろされた、グリッサン唯一の作家論。20世紀アメリカ文学最大の作家フォークナーの文学世界に分け入り、黒人の立場から、フォークナーの問いを問い直し、ヨクナパトーファ・サーガにクレオール世界を読み込むことで、アメリカスの時空間に刷新された作家像を定着させる、壮大にしてエレガントな、後期グリッサンの代表作。

 

フォークナーの物語世界で進行するのはクレオール化である。グリッサンはフォークナーの作品群のうちにカリブ海地域が経験してきた歴史を読み取った。フォークナー作品における「崩壊」は言わば放埒、放縦なものとして家系に混血や近親相姦といった正統性の壊乱をもたらしながら閉域としての境界を踏み越えて遠方へと拡張する力である。つまりクレオール化だ。これがフォークナー論としての本書のおそらく最大の独創だろう。本書はその意味で後期グリッサンの詩学〈全 – 世界〉を背景に、アメリカスの時空間のうちにフォークナーを位置づけるという読解の試みであると言える。[訳者解説より]


目次

ローワン・オークに向かってさまよう
フォークナーへの手引き
黒と白のうちで
〈踏み跡〉
現実、後れて来るもの
後れて来るもの、言葉
〈境界〉、〈遠方〉、再び〈踏み跡〉
九八頁への補足
用語解説

訳者解説
訳者あとがき


著者
Édouard Glissant(エドゥアール・グリッサン)
1928年マルティニック島生まれ.詩人,小説家,評論家,思想家.現代カリブ海文学の第一人者にしてフランス領カリブ海発「クレオール」思想の代表的論客として注目を浴びる.2011年,パリにて没.
主な著作に,Soleil de la conscience(1955)Les Indes(1956)La Lézarde(1958)(『レザルド川』恒川邦夫訳,現代企画室),Le sel noir(1960)Le Quatriéme siécle(インスクリプト近刊),Malemort(1975)Le discours antillais(1981)(インスクリプト近刊),La case du commandeur(1981)Poétique de la Relation(1990)(『〈関係〉の詩学』管啓次郎訳,インスクリプト),Tout-Monde(1993)Traité du Tout-Monde(1997)(『全 – 世界論』恒川邦夫訳,みすず書房),Introduction à une Poétique du Divers(『多様なるものの詩学序説』(小野正嗣訳,以文社),Faulkner, Mississippi(1996)(本書),Cohée du Lamantin(2002)La terre, le feu, l’eau et les vents : une anthologie de la poésie du Tout-Monde(2010)ほか.

訳者
中村隆之(Nakamura, Takayuki)
1975年東京生まれ.フランス語圏文学研究(主にカリブ海地域文学).東京外国語大学大学院博士後期課程修了.マルティニック島およびフランス本土(パリ)での研究滞在を経て,現在,明治学院大学非常勤講師.
著書に『フランス語圏カリブ海文学小史』(風響社),訳書にエメ・セゼール『ニグロとして生きる』(共訳,法政大学出版局)がある.