68年5月

ローラン・ジョフラン 著
コリン・コバヤシ 訳

定価:本体3,200円+税
2015年8月5日書店発売

四六判上製カバー装 9ポ二段組 388頁
ISBN978-4-900997-46-2
装幀:間村俊一

学生叛乱からゼネストへ、
未発の革命の全体像!

五月革命─1968年5月のパリで勃発し、日本をはじめ先進国全体に波及して、20世紀後半の歴史を画することになったこの事件については、これまで具体的な詳細が日本で紹介されることはありませんでした。本書は、学生運動のリーダー、労働組合幹部、大統領ドゴール・時の首相ポンピドゥーをはじめとする閣僚達、治安警察の責任者など、主要なアクターの動きを軸に、5月1日から5月31日までを、日付を追って再現した唯一のノンフィクションであり、この運動をリアルタイムで経験し、のちに『リベラシオン』発行人、『ヌーヴェル・オプセルバトゥール』編集長などを務めたローラン・ジョフランによる、臨場感溢れるドキュメントです。危機はなぜ起こり、どのような経過を辿り、運動はどこへ向かったのか。歴史的社会的背景を踏まえて描かれた、68年5月に関する基本図書です。年表、資料写真、バリケード地図、多数訳注付。

本書は、〈六八年五月〉の出来事をクロニクルの体裁で記述したものであり、日を追って展開する事態の推移を理解しやすく、「五月革命」と言われたこの出来事の全体像に迫るためには格好の入門書となっている。本書が〈六八年五月〉のすべての側面を網羅しているわけではないが、幅広い読者を対象に、出来事の推移を日ごとに追いながら、事象の全体を浮かび上がらせている。
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本書によって、この歴史的出来事の全体像やその社会的、文化的背景、端的に言ってあの時代の空気は浮かび上がってくる。[…]
〈六八年五月〉の事象が「とらえがたい」側面を多く含んでいたとするなら、その一つは、戦後のベビーブーム世代が社会の中でとったあらゆる行動が大胆不敵で、既成の政治運動を大きく凌駕する現象だったからだ。この現象は、言うまでもなく第二次世界大戦後の最も大きな社会変化であり、この世代は、政治的潮流を変えようとしたばかりではなく、文化的様相も大きく変化させたのだ。また当時の政治家たちの挙動の一つ一つに、当時のフランス政治の内幕が伺えて興味深いし、ドゴールの「バーデン・バーデン逃避行」は、いまだに真実のすべてが解明されていない故に、事件の中の事件といってよい、本書のもう一つの山場となっている。
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世界で同時多発的に見られたこの時代の若者たちの反抗には、たしかに共通項も多いが、日仏の運動を比較する場合、歴史的文脈や政治的背景は大きく異なっているのだから、単純な比較は意味をなさない。日本では、産学協同が批判され、大学解体が叫ばれ、戦後民主主義への批判があったのに対し、フランスでは、従来の因習的な社会的枠組み全体の撤廃を目指すものであったし、政治的には植民地主義/帝国主義批判からはじまり、成長主義/生産第一主義への批判が自然への回帰に呼応していた。この運動を分析するには、フランスの社会、政治状況とその歴史的過程の特異な諸相を見極める必要があるだろう。(「訳者あとがき」より)