2016年4月22日書店発売

津島佑子 著

思いがけなくも先立った大作家が、
3・11以後の世界への、怒りと希望をたゆまず語り続けた、
最後のエッセイ集。

地上の悲惨を超えて、ひびきつづける「夢の歌」──。
3・11後の原発と政治情勢をめぐって、ざわめき立つ怒りを記した全エッセイを収録。まばゆく光溢れる世界を願った小説家が、わたしたちに手渡した課題とは。生と死について、家系をめぐって、惹かれ続けた場所、親しんだ物語について綴る晩年の随筆を併せた、30篇、550枚のエッセイ集成。身近に最後を見守った津島香以氏のあとがきを添えて刊行。

今の日本で小説を書く人間のひとりとして、私はこうしたさまざまな場所、時間から響いてくる声をもっともっと聞き届けたい、と願っている。それはいくらでもある。今までの私が気がつかなかっただけ。その声を受けとめながら、今後もつづくと言われる大きな地震とまわりに浮遊する放射性物質におびえつつ、自分の小説を書く。悲しみを呑みこんでがれきのなかを歩きまわり、運良く自分に必要なものが見つからないかと丹念に執念深く探すひとたちのように、こつこつと私は自分の小説を書きつづける。思うように書けないかもしれないけれど、少なくとも書こうとする。そこから、なにが見つかるのだろう。それを私は「希望」と呼んでもいいのだろうか。(本文より)


目次

「いのち」の輝き
戦争の時間が流れて

I
「夢の歌」から
枯れ葉と「高校生」と私
この「傷」から見つかるものは
どうしてこんなことに
植物の時間・私の時間
「愛」の意味
草がざわめいて
隠れキリシタンと原発の国
先住民アイヌの意味
「女作家」が台湾に集まった
「女」と「男」の根源的課題
祖父と曾祖父の話

II
北京、湘西、そして新疆ウイグル
湘西の桃と桜と
国境、民族を超えて
タジキスタンの赤ちゃん

III
物語る声を求めて
異界はどこにある
音の魔力
『うつほ物語』の呪術
「神謡集」が投げかける声
半歩遅れの読書術
昨日読んだ文庫

IV
ニホンオオカミの笑い
アリとインターフォン
牛のしっぽと人生の喜び
なつかしい「トノ」「ヒメ」「ボーズ」の声
うしろの正面

母の声が聞こえる人々とともに   津島香以