『六月声明』
文書4



《7月8日アピール》





 私たちは、今国会であわただしく上程された「日の丸・君が代」法案が、「慣習の明文化」にとどまらない重大な政治的意味を持つことに、世論の注意を喚起したい。

 「日の丸・君が代」の法制化は、天皇制をめぐる戦前と戦後の連続性を再導入するものであり、私たちはこれが、現在の日本の民主主義と市民的自由の基盤を危ぶめるものだと認識する。このことを、どの国にも国旗・国歌があるという一般的事実と混同してはならない。

 この法制化は、戦前の国家主義的国民統合と、周辺諸国の植民地支配や侵略の過去についての議論を封印し、法律による「正統性」を付与することで「日の丸・君が代」を再び国家の側から押し付けることを意味する。これは国際化の進む現代において、国の内外における異なった人々との共生を阻害するだけでなく、多様な人々の真の相互理解と共存への道をあらかじめ封じるものであり、グローバル化の進行する21世紀に向けて、古い国家イメージとは違った新たな国家像が模索されるべきときに、その要請に逆行するものだといわざるをえない。

 また、「日の丸・君が代」はもともと戦前の国家主義教育により広められてきたが、これが今あらためて法制化することは、学校教育の場にもちこまれる権威主義的儀礼と強制された「慣習」を公認することとなり、教育の現場における自由と創意の発露を妨げ、抑圧の環境を強化する結果になることが危惧される。

 また私たちは、冷戦体制崩壊後、バブル経済の崩壊をも経験し、グローバル化の進行のなかで、日本の市民社会も新たな成熟の段階に入りつつあるにもかかわらず、その批判的意志を代表する政治勢力が形成されず、匿名の国家意志がつぎつぎとまかりとおってゆく日本の政治の現状にきわめて強い危機感を抱いている。

 日本が、国の内外で真の自由を擁護し、国際社会に責任をもつ、その意味で「誇りうる」国でありたいと願っているすべての人びとに、この法案の成立を阻止するためにあらゆるところから意志表明をすることを訴える。また法案審議のプロセスに関わる、諸政党、国会議員の諸氏に訴える。国家の基本原理が問われているときに、形式的な審議に同調し、民主主義を危機に陥れて省みない風潮に組することなく、市民社会・国民の真の代表として民主主義の本意を守りその実を貫かれることを強く訴える。



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