『六月声明』
文書11



《報告5》





「報告5」(7月19日発信):

「国民投票」問題について:

共同署名者の皆さん、

 この数日間、共同署名者のなかの何人かの方々から疑問と問い合わせが出されております。とくに7月14日に世話人有志が行った「国民投票」の提案については、さまざまな疑問の声が寄せられ、すでにネット上で「公開質問状」のような形での文書が一部の共同署名者に流されたり、疑問の表明が同じように流されたりしております。情報が共有されておらず、報告も不十分なまま、多くの方々に誤解や不安やとまどいを与える事態が生まれてしまっていることについてお詫び申し上げます。

 

1)事実経過の説明:

「「日の丸・君が代の法制化」に反対する共同声明 世話人有志 石田英敬、小森陽一、西谷修、本橋哲也、山口二郎」名で7月14日に発表しました、《国旗・国歌の法制化に関し国民投票を行うことの申し入れ》と、同日14時半から衆議院会館内の野党記者クラブにおいて行いました記者会見(出席者:小森陽一、西谷修、山口二郎)について、より詳細な説明を行いたいと思います。この件につきましては、すでにネット上で「公開質問状」のような形での文書が一部の共同署名者に流されたり、疑問の表明が同じように流されたりしておりますが、今回の再報告は、7月17日(土)の午後6時から9時30分まで東大駒場で行われました「六月声明世話人会」(主席者 石田英敬、西谷修、坂元ひろ子、坂本恵、鵜飼哲、本橋哲也(山口二郎、小森陽一は電話連絡での参加、別途報告いたします緊急出版の件で、出版編集者の共同署名者の皆さん数名が同席されました)において、正確な事情説明をきちんと行おうという意見が出されたことにもとづきまして、7月15日付「経過報告4」を補足するためにおこなうものです。重複する箇所がありますが、事の必要上ご容赦ください。

 「国旗・国家の法制化に関して国民投票を行うことを提起する」というアイデアが出されたのは、7月13日の相談会(午後10時から12時30分)でのことです。参加者は、石田英敬、小森陽一、西谷修、本橋哲也、山口二郎。この日は、「自自公」連立が確定した日で、「自自公」の成立によって状況は大きく動き、もう単なる反対集会をいくらやっても法案の成立は避けがたいというところまで切迫した状況だという認識でした。

 そこで、われわれでイニシアチヴをとって、「「自自公対国民(ないし市民)」といった対立軸を作り、政党の数あわせだけで「国民的」論議もなしに法制化を決めてゆくことへの異議を、たとえば「法制化の是非を問う国民投票」といったかたちで提起できないか、といった方向が浮上しました。但し、議員立法による「国民投票」の法案の内実については、その範囲を日本国籍を有する者に限るべきではなく、「たとえば、16才以上の(外国人をふくむ)居住権をもつ者」を対象に、「日本で学校に通う子どもを持つ外国人の親」などを「有権者」に含むものとすべきであるということで一致しました。

 7月14日午後参議院議員会館で山口、小森、西谷が、民主党議員と会談し、今後の方針について話し合いました。その結果、「自自公」連合の成立を受けて、このままでは法案成立は必至という空気が政界にもマスコミにも流れ、法案成立阻止に向けての考えられる有効な方法として、「国旗・国歌の法制化の是非」を国民投票にかけることを議員立法で提案することを促す以外に道がないという認識で一致しました。

 そこで、国会での審議日程も考え、山口が急遽「国旗・国歌の法制化に関して国民投票を行うことの申し入れ」を起草し、即日、国会内国会派にこれを届けた(手渡しした)上で、同日4時半に衆議院会館内の野党記者クラブにおいて、この申し入れに関する記者発表を行いました(この件は本日7月15日の一部朝刊で報道されました)。記者会見では、山口が、議会内政治情勢からして国民投票案によって野党の結束をつくることを提唱、西谷は、政党の離合集散と数合わせのなかで民主主義が空洞化してゆくという状況に楔を打ちこんで、国家的に収束されてゆく「公」に対して、わたしたちの「公共性」を対置する議論の公共化の必要を主張、小森が、この国民投票の対象は、通常の国政選挙とことなり、たとえば16才以上の(外国人をふくむ)居住権を持つ者や、学校に通う子供をもつ外国人の親などを含むべきであることを説明しました。

 この「申し入れ書」は、共同声明署名者やその六月声明世話人会の合意を得たことがらではありませんでしたから、前日の議論に参加をしていた石田、本橋を加えた「共同声明世話人有志」の名で出すことに現場での議論の末決まりました。

 以上が「経過報告4」を補足する「国民投票」の申し入れについての全般の事実経過の報告です。

2)西谷修氏による論点の整理: 

 今回の「国民投票」問題をめぐって、ネット上で不特定多数の人々に対して質問や疑問を表明する動きが出たことはすでにご承知の通りです。このネット上の混乱と、一部の人々の無責任な言動に抗議して声明起草者の一人西谷修氏が運動からの「離脱」を表明されました。私たち世話人は、この事態を大変残念に思います。私たちの説明不足のために誤解を与えてしまい、その点についての正当で本質的な危惧から、署名者全員にメイルの発信をされた米山リサ、T. フジタニさんに対して、西谷さんから発信されていた回答の要旨を、本人の承諾のうえ、転載させていただきます。


*  *  *

 1999.7.17

 明らかに基本的な誤解があるようなので、それを解いておきたいと思います。

1) 「日の丸・君が代」を国民投票にかけるなどという話は誰もしていません。その「法制化の是非」を国民に問う、ということです。このことは石田氏の報告に明示されているはずです。にもかかわらず、「国民投票」に関する「予断」によって誤解が蔓延しているというのが実情です。

2) 「国民投票」という制度は今の日本にはありません。したがって具体的な提案は、「国旗・国歌の法制化の是非を国民に問う法律」の発議を国会議員に促す(実際には、それを今回の法案阻止の最後の切り札としている議員たちを側面援護する)、ということです。

3) また、この制度は日本にはないから、その法案はたとえば「投票権者」として、高校生にはこの程度の判断力を期待できるし、学校現場の当人たちだから、「16歳以上」としたり、子供を日本の学校にやっているあらゆる国籍の親を含む、といった提案もできるし、すべきだと考えています。

4) それと、「国民投票のための法案提出」提案は、「共同声明」が「声明」を出すだけで満足するのなら別として、具体的な可能性のあるかぎり、現実的に法案を阻止するための行動を行う、ということを前提に、16日の民主党の態度決定を前に、差し迫った状況下でなされたものです。もともと「共同声明」は何らの組織的基盤をもって行われたものでもないし、今も組織ではありません。たまたま集まった人たちが「世話人」ということで連絡をとっていますが、話し合ったり行動を決めたりするのに、有志の3、4人が動いているだけです。はっきり言って誰も署名以上の関与はしないわけです。そのなかで、わたしを含む何人かは、とにかくできるかぎりの法案阻止の可能性を現実化するということで、動いています。だから、その活動に署名者全員に対する拘束力がないことももとよりのことです。

5) これは個人的なことですが、実は山口二郎氏を中心とするこの間の「国会工作」、とりわけ「国民投票法案」の提出を考えている議員たちを支援することに関して、わたし個人としては躊躇もありましたが、一方でパンフレットの出版を準備しながら、日本の出版界に(おそらく社会全体に)この種の問題を忌避する空気がすでに浸透しており、出版さえ困難だということを実感したこともあって、今、日本でもっとも求められる議論の公共化にとって、この提案は積極的な意味をもつのではないかと考え、踏みきりました。また、状況も差し迫り、限られた可能性のなかで、その場、その場の議論をとおして、現在の「自自公」連合の成立による「どんな法案も通る」という状況では、論議のラジカルな「公共化」というのは、予想される今後の政治情勢のなかでも、正当な方向なのではないかと考えています。それで「国民投票法案」サポートという方向を支持したということです。

 おそらく情報が十分共有されていないというのが一番の問題かと思われますが、とにかく短時間で動ける者だけが動くというかたちでやらざるを得ない、という条件のもとでは、それもないものねだりです。ご理解ください。 


 

3)「世話人」問題等:

 以上の報告事実に関連して、「世話人」とは何か、「世話人有志」とは何か、等についての疑問も寄せられています。この点は、運動論・組織論に関わる議論のテーマですので、今回の「報告」には含めず、私たちの認識の表明と皆さんとの意見交換の機会を別にもちたいと思います。とりあえず、現在までの「世話人」の位置づけについては、7月9日発信の「7月8日「討論集会」報告」を参照してください。

4)「フォーラム」開設の予告:

 本日未明に発信しました「すべの共同署名者の皆さんに訴えます」で述べましたように、現在、共同署名者の今福龍太さんが、ご自身主宰のホームページのなかに「フォーラム」の場の提供を準備してくださっています。この件につきましては、多くの皆さんのご意見やご感想がおありでしょうが、不特定多数の方々へ無秩序にメイルを流すようなことはお控えください。世話人や上記関係者にすぐにでも連絡をしたいという方がいらっしゃいましたら、私が責任を持ってメイルを転送いたします。すべてが順調にすすめば、明日には「フォーラム」開設が可能になる見通しです。 

 以上 ご報告申し上げます。

                           7月19日 石田英敬

                           



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